The Beatles - Eleanor Rigby (From "Yellow Submarine")
ビートルズの『Eleanor Rigby』はすごい曲だ。ストリングスのアレンジやポールの歌唱、なにより歌詞が素晴らしい。ある人は「この曲を聴いて本当の孤独というものを感じた」みたいなことを言っていた。
しかし、ぼくはそれほどこの曲を聴いて孤独を感じない。一個の作品としては本当に素晴らしいのだけれど、どちらかというと、そのすごみをひしと感じるだけだ。
Ah, look at all the lonely people というフレーズが、「あの哀れなやつらを見てみろよ」と見下して歌っているように聞こえてしまう。もちろん、そういう意図で言っているわけではないのだろうけど。
最近聴いた歌のなかに、聴いている途中でつい目が潤んでしまったものがある。
たまの『きみしかいない』 歌詞がかなり難解。
最終避難場所のともだちとキスをして
とかげの棲む公園をあとにした
きみのあたまは誰かのいたづらでもうこわれちゃってるから
図書館のガラスを割って這入る
誰もいないから きみしかいない
誰もいないから ぼくの言うこときこうね
ずぼんにしみついた
さばの缶詰の匂いが大嫌いで
みんなの待つ公園を爆破した
不自由な身体のきみとあそびながら
地下室で見つけた火薬の本
誰もいないから きみしかいない
誰もいないから きみがこの世でいちばん
誰もいないから きみしかいない
誰もいないから きみがこの世でいちばんぶす
誰もいないから しょうがないよ
誰もいないから ぼくらがいるのはずるいね
(最初20秒ぐらい音がありません)
「きみしかいない」というフレーズをそのまま、痛々しく愛を叫ぶラブソングとして受け取ることもできる(キスなんていう言葉も入ってるし)けど、知久寿焼さんの壊れちゃったような歌い方が切なくて、どこか閉じこもっているような印象を与える。それから、「誰もいないから」の前には「ぼくの他には」という言葉が省略されているのだと思う。だからきっと鏡に向かって「きみしかいない」って言ってるんだろうな。
きみとぼくしかこの歌の中にはいなくて、きみはぼくで、それで完結してしまっている世界。だから孤独っていう表現がすごくしっくりくる。最後の「誰もいないから ぼくらがいるのはずるいね」という一節には鳥肌すら覚える。
ぼくはどこまでもぼくで
きみは圧倒的にきみで
それがもう長い間続いてて
朝は夜と手を組み始めて
昼を追い詰めてゆく感じだ
『Eleanor Rigby』と『きみしかいない』では、孤独のタイプは異なるかもしれない。
だが、『きみしかいない』の孤独の深さは尋常でない。その歌詞は共感を呼ぶようなものではないかもしれないが、説得力という点では比べものにならないほど力強い。あまり上手くいえないけど、然るべきときに聴けば、この曲以上に聴く者を感動させてくれる歌はないだろうな。