朝起きるとまだ誰も起きていなくて、のんびり身支度をしてゆっくりと出かけていき、好きな女の子に話しかけられ、空は晴れていてなんとなく心地よくて、帰り道に人懐っこい猫と戯れて、家に帰ると夕食は手巻き寿司で、家族との会話も不思議と弾んで、そんな楽しい一日の終わりに風呂に入る。「ああ、今日は素敵なことに溢れていたな」と思う。
そんな時、ふと恐くなる。こんなに幸せな状態が続くわけがない。何かの間違いだ。それか、これから何かとっても悪いことがあるんだ。
体の関節がきしむ音が妙に大きく聞こえてくる。自分の呼吸をいちいち数えたり、耳や鼻を触ってそこにあることを確認したくなる。わざと湯船に顔つけて呼吸を制限したり、風呂からあがって水気がなくなり体が冷えるまで床に体育座りしたり...
なんだか慣れていないのかな。
(ほんとうに幸せな人って、あまり感情に変化はなくて、いつも満ち足りているのかしら。)
幸い、最近はそんな状態に陥ることはない。
というのも、
日没が夜の9時半近くなのがなんとなく憂鬱だったり、
箸を忘れてボールペンで納豆をかき混ぜたり、
仏像がスーパーで売られていたり
するからだ。
もちろん、幸せなことが起こらないわけでもないのだけれど。