屋根裏の夢想者

所詮僕が思っていることなんて、観察を超えた偏見や思い込みなんだ、みんなと同じく。

そんな夜も あったっけ

 

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三週間前の土曜日、午前9時45分発の長距離バスに乗って、ぼくはおよそ五か月間を過ごしたエディンバラを出た。 十時間もかかって着いたのはロンドンのヴィクトリア駅のそば。駅の中にある「わさび」という名前の寿司屋で夕食を買って、のろのろと歩き始めた。

この大きな街で、ひとり宿無しで一夜を明かさなければならない。最も安く今回の目的地に着くには、ここで翌日に出るバスを待つしかないのだ。

 

まず目指したのは、日本の古本を売りながらカラオケの設備もあるというお店。様々な人がひしめく、ちょっと危ない雰囲気の歓楽街を、できるだけ影を薄くしようと尽力しながら進んだ。しかし、きちんと場所を把握していなかったために、閉店の時間までにたどり着くことはできなかった。

 

そのあと、とぼとぼとテムズ川の方へ向かった。まだまだたくさん人が出歩いている。ぼくみたいにリュックを背負ってひとりでうろうろしている人も見受けられた。川に浮かんだ船からは大音量で音楽が流れてきていて、あちこちどんちゃん騒ぎが沸いていた。対岸にはロンドン・アイという大きな観覧車と、川べりにだらりと寝そべったホテルが、強欲な電飾で浮かび上がっていた。真下を見遣ると、誰もいない船が船着き場に身を寄せていた。その暗い空間に目を向けていると、少し緊張がほぐれた。

 

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それから大きな湖のある公園に向かった。人気が少なくて、ここで野宿してもいいかなとも思ったけれど、それにはちょっと服装が足りなかった。

 

またテムズ川へ戻ってきてしまった。ベンチに座ってお寿司を食べた。ノートを取り出して、とにかく何かを書こうと思った。昔から、何か負の感情に負けそうになった時は、真っ白な紙に矢鱈目鱈に言葉を書きなぐって落ち着かせてきた。中学、高校のころは、好きな曲の歌詞や、漫画や映画のセリフだった。今はそれが自分の言葉であるということが少し誇らしい。

 

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12時を過ぎて、辺りはいっそう冷え込んできたので、24時間営業のマクドナルドへ向かった。日本なら、コンビニやネットカフェなど、一夜を明るく過ごせる場所がたくさんあるけれど、ロンドンのお店はなかなか夜更かしをしてくれない。店内の雰囲気は最悪だった。BGMはイヤホンで聴いていた音楽が聞き取れないほどにうるさくて、酔った客の会話はそれに拍車をかけた。時々襲ってくる睡魔も強烈だった。さらに、午前2時、3時をまわっても、まったく客足は絶えなかった。

 

ポテトとコーラで四時間ぐらいねばったが、もうそれ以上は居たくないと思い、その場を去った。空はすでに赤らんでいた。

 

 

 

 


山崎ハコ ライブ(1976) さすらい